2011 年夏、志人はTriune Gods としての活動で慣れ親しんだカナダ、モントリオールへ再び渡った。
志人が探求する趣深い日本語表現と歌声は、国境を越えて聞く者を魅了し、
モントリオールのアーティスト達の創作意欲を刺激した。
彼らとの生活やセッションの果てに創り上げたこのアルバム「発酵人間」は、
志人の人生観が様々な楽曲で描き出されており、自身のキャリアを振り返っても「一生に一枚」と言っても過言ではない位置付けにあるという。
トレンドから一線を引いたその独特の言葉とサウンドの響きは存在感を保ち色褪せることなくリスナーを刺激し続けている。
「産み出す者」同士が共鳴し合い一つの到達点を迎えたのだ。
各々が強固なオリジナリティーを持つが故に迎合ではなく高い地点での融合を見せる傑作となった。
志人の内省的だが決して独りよがりではない歌詞は深層心理を抉り、
闇から光へと歩を止めない人々の道となり、
モントリオールのアーティスト達が創りだした音はその道筋に強固な骨組みを形成する。
流行り廃れることから離れ「発酵人間」は此れからも醸成され続けていく。
ジャケットアートワーク、歌詞カードブックレットには、志人の敬愛する写真家ジュンク西村氏の写真を掲載。
ファインダーによって切り取られフィルムから滲み出る人間味は強烈に「発酵人間」を表している。
<注意事項>当作品は2012 年発売のGME010 Zymolytic Human ~発酵人間~と音源内容は全く同一のものです。
楽曲紹介
1. 自然生 ~ 何処へにも行かず此処で踊れ ~
志人が独自に到達した日本語表現の深淵、奥深さ、詩人としての思慮深さが本楽曲で読み取れる。自己を俯瞰した視点から紡ぐ詩世界は、「ありのまま」で生きる事に伴う難しさを表現すると共に、自然界や森羅万象の姿と照らし合わせ、飾り気なく「自分の踊り」を踊る草木達や空を行く雲達が無言の内に人類へ知らしめる「生き方」を説く。入り組んだ精神世界へ引き込まれる様な浮遊するシンセサイザーやエレクトリックギター、ダブルベースが牽引するグルーブは Heliodrome によるプロダクション。
2. 狐の嫁入り ~ 神様が棲む村のうた 〜
志人の真骨頂ともいえる古より伝承する日本語を用いた呪術的な雰囲気を持つ楽曲。地を這うかの様なうねるベースに合わせ神楽の口上や祝詞の様な志人の唄が難解な拍子に絶妙に絡み合う。こちらも Heliodrome によるプロダクション。
3. 一物全体 ~ 輪廻転生・生命流転 ~
シンプルでどす黒いループが中毒性を生む志人の盟友 Mongoika によるプロダクション。BLEUBIRD、Thesis Sahib、Jesse Dangerously とのマイクリレーは圧巻。各々のバースに添い遂げる様な超絶技巧のスクラッチは日本屈指のターンテーブリストDJ KEN-ONE が参加している。
4. 遺稿 改 生こう ~ 腐敗地獄・陰 ~
悲しき現実とそれに抗い「生きる」という事への宣誓文のような詩作。押し殺された声で廃工場の闇の中で読み上げられたかの様な雰囲気が一つ一つの言葉を際立たせている。サウンドプロダクションは Scott Da Ros。
5. 人間復興 ~ 蘇・黄泉帰り ~
Kid Koala が東日本大震災の後に日本の人々へ音を届けて欲しいという並々ならぬ願いを志人へ託したタスキ渡しの一曲。本曲はKid Koala 自身のスタジオにてレコーディングされた。Kid Koala 自身によるスクラッチサンプリングと荒々しいドラムの激しいビートに対し、勇猛果敢に挑む志人は祈る様にしてHUMAN RECONSTRUCTURE の詩を紡ぐ。ラストに入るスクラッチは DJ QBert による。奇跡の融合が起きた一曲。
6. 満月 ~ 中庸 ~
精神と肉体が乖離して行く人々の心を繋ぎ止める祈りの詩。モントリオール在住のChi(ラオス人)とCatherine(カナダ人)によるグループSally Paradise の作り出すサウンドに志人のマントラの様な詩群が絶妙に絡み合い、音と言葉の静かなトランス状態を創り上げている。
7. 身土不二 ~ 恐悦至極・陽 ~
フィールドレコーディングの焚き火の音の中で読み上げられる詩は、「遺稿 改 生こう」を陰とし、本曲は対極の陽と置く。陰陽のバランスの中で「命の尊さと生きる事の気付き」についてのポエトリーリーディング。サウンドプロダクションは志人(ボーカルループ/竹笛)と Scott Da Ros との共作。
8. 新月 ~ 心の宇宙 ~
遥か彼方に宇宙があるのであれば、ごく身近な自身の心の中にも宇宙がある。内と外の宇宙に想いを馳せ、新月の様に瞳を閉じた時に聴こえて来る内的宇宙を史観する詩。サウンドプロダクションは「満月」に続いてSally Paradise。
9. 忘れな草 ~ ひっそり ゆっくり じっくり ぐっすり ~
人の視点から離れ、道端にぽつねんと佇む「忘れな草」となり、ミクロとマクロの世界を映し出す無私の詩。サウンドプロダクションはHeliodrome のEric Gingras。Eric Gingras の自宅で一発録音されたカセットテープレコーダーによる肉声音源。
10. 道 ~ たまゆら ~
モントリオールの音楽家「SNAILHOUSE」のMichael Feuerstack がアコースティックギターで参加し、一音一音、一期一会の想いを大切になぞりながら奏でる「此ノ世界を愛でる歌」歌い手としての志人の歌心溢れる美しき「うた」の楽曲である。
11. 発酵人間 ~ 回帰 ~
巡り巡る人生において何度も「始まり」が訪れるように終曲でありながら序曲たりえるこの楽曲は来るべき未来へのアンセムとなる。自然と不自然とを見極め、腐敗せずに発酵して生きる事を選ぶ人間の「道を示す」詩。ひと雫の雨粒の様に繊細且つ人生と言う壮大な映画の様な展開が聞く者を惹きつけるこのビートはScott Da Ros とVid Cousin からなる Deadly Stare によるプロダクション。
アルバムを通し、本楽曲迄辿り着いた時には、全く新しい角度で自分自身の人生を見つめ直す視点が現れている事だろう。幾度も迷いながらも生き続ける全ての愛おしき人類へ向けて志人が贈る本アルバムの表題曲である。
参加アーティスト
ypl(Heliodrome) / Eric Gingras(Heliodrome) / Mongoika / Jesse Dangerously / Thesis Sahib / BLEUBIRD / DJ KEN-ONE / Scott Da Ros / Kid Koala / DJ QBert / Sally Paradise / Michael Fauerstack / Deadly Stare(Scott Da Ros & Vid Cousin)
アートワーク
ジュンク西村氏
オフィシャルホームページ
http://www.junkunishimura.com
Flickr
https://www.flickr.com/photos/junku-newcleus/
素晴らしい写真が掲載されています。是非ともご覧ください。
Olivier Gingras
オフィシャルホームページ
http://oliviergingras.com
最近では志人の「Eu haere ia oe? / てけてんすくてれすくてんすくす」のジャケットに彼の絵が採用されています。
作品情報
Artist: 志人
Title: 発酵人間
Format: CD
発売日: 2017.10.04
定価:2500円(税別)
※デジタル配信はGME010として継続販売中です。フロントカバーアートワークも以前のものになります。